寝具類について日中対照の用語集を整理していた時、こんな会話になりました。
A(台湾人):「布団(ふとん)」は「被子bèizi」ですね。
B(日本人):「被子bèizi」は「掛布団(かけぶとん)」でしょ?「敷布団(しきぶとん)」は「褥子rùzi」よね?
A(台湾人):え?「敷布団(しきぶとん)」って何ですか?「褥子rùzi」って何ですか?
使わないものは、名前も定着しない
B(私)は、かなり驚きました。だって、中国普通話を勉強していた学生時代に、「被子bèizi=掛布団(かけぶとん)」「褥子rùzi=敷布団(しきぶとん)」という対応を覚えてから何十年も、それが当たり前だと思ってきたのですから。
色々話していると、台湾でも「被褥bèirù」という言葉を知っている人はいるようです。教育部の辞書には、ちゃんと「褥子rùzi」も「被褥bèirù」も収録されています。
でも、民間では使わない。
冬でもそれほど寒くない台湾では、ベッドの上にシーツを1枚敷くのが普通で、綿入りの布団を敷く習慣がないからということでしょう。これに対して、冬場は零下数十度にもなる中国北部では、敷布団が不可欠です。国民党と一緒に入ってきた北京語の様々な語彙の中には、こうして使われる機会がないまま忘れられていくものがあるのですね。
「褥子rùzi」から思い浮かべるのは、日本の和風旅館で見た「敷布団」だという台湾人スタッフもいます。中国語なのに、日本の生活習慣と結びついているところが、何とも不思議でおもしろいと思いませんか?