「tā」という音だけ聞くと、「他?她?」と思ってしまいそうなこの言葉。字幕を見ると、あまり馴染みのない漢字が当てられているのです。
(画像はLINE TVからお借りしました)
(法律管不了的)祂會管
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前回の記事の少し後のセリフです。悪人がきちんと裁かれないことに対する疑問をまくしたてる実習生に対し、指導係のベテラン弁護士がこう答えています。「祂tā」は神様を指す代名詞です。
「tā」と発音される三人称代名詞を、「他、她」等を使って書き分けるようになったのは、比較的最近の話。元々はひとつの語彙だったと言われています。だから、100年ぐらい前の小説を読むと、全部「他」で書かれているものもたくさんあります。
今、台湾で見かける三人称代名詞の漢字には、以下のようなものがあります。
①他(男性)
②她(女性)
③牠(動物)
④它(人、動物以外の物事)
⑤祂(神様)
ただし、この使い分けも個人差がかなりあるようです。
英語の「he she it 」の使い分けに慣れてしまうと、「tā」というひとつの音で、①-⑤の意味を表すのは会話で混乱しないのだろうか、と心配になるかもしれませんね。でも、実際は、話の流れがあったり、動作や視線で対象を示したりできるので、それほど問題はありません。この場面でも、視線を上に向けることで、「神様」を表していることがわかります。逆に、書かれたものにはそういう補足情報がないので、漢字を書き分けることで、何を指しているかをより細かく伝える必要があるのでしょう。
また、英語の「he she it 」とは違って同じ音で読むので、話す時はもちろん、書く時でも、ひとつの文の中に①-⑤を使い過ぎるのはお勧めできません。一部を固有名詞にしたり、他の言い方に変えたりする方が読んだ時にきれいだということも、ぜひ覚えておいてください。
(2020.03.05)
注:フォントの関係で、「祂」の字体が字幕と異なることがあります。