「がんばってもがんばっても、どうしてもできない」という時に使うこの形。上手く使いこなせると、中国語の面白さにきっとはまります。
(画像はLINE TVからお借りしました)
萬一我一直回不去
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このドラマは、時を越えて移動するタイムトラベルの話。過去に行った主人公が、現代に戻る方法がわからなくて困っています。
「できる、できない」に相当する中国語はたくさんありますが、この「回不去huíbúqù」という可能補語の形もそのひとつです。
文法が苦手な人は、この言葉を聞いただけ逃げ出したくなるかもしれませんが、登場人物の心情を理解するためにはとても役立つ形なので、少し我慢しておつきあいくださいね。
まず、この可能補語の作り方を簡単に説明します。「回huí(帰る)」という動詞に、「去qù(行く)」という方向を表す補語がついて、まず「回去huíqù(帰って行く)」という「動詞+方向補語」の形ができます。その間に「不」を入れると、それができないことを表す可能補語になり、「帰ることができない」という意味になるのです。これを肯定の形にしたのが「回得去huídeqù(帰ることができる)」です。
慣れないうちは、動詞を使った三文字の熟語で真ん中が「不」又は「得」だったら、この可能補語かなあと見当をつけ、四角で囲んだりしながら訳してみると、そのうちこれがワンセットになって見えてきます。時々「洗不乾淨xǐbùgānjìng(洗ってもきれいにならない)」のような四文字になることもあります。
では、この可能補語がどんな時に使われるかというと、「どうしてもできない」という時です。自分がいくらがんばってもどうしようもないんだという気持ちを表します。そのため圧倒的に多いのは「動詞+不+X」の否定の形。こちらが先にあって、「そんなことないよ。できるよ。」と言いたい時に使うのが「動詞+得+X」の肯定の形なのです。
このセリフは、「現代に戻る方法をあれこれ考えてみたけど上手くいかない。どうすればいいか見当もつかない。」という主人公の焦りを表すものなので、この形を使うのがぴったり。直後には「我找不到回到2019年的辦法(2019年に戻る方法を見つけることができない)」というセリフもありますが、この中の「找不到zhǎobúdào(見つけられない)」も可能補語です。「找到zhǎodào(見つかる)」という「動詞+結果補語」の間に「不」が入ってできたもので、肯定形は「找得到zhǎodedào(見つけられる)」です。
「いくらがんばってもどうしてもできない」という気持ちを表すこの可能補語は、人間関係を円滑にしたい時にとても役立ちます。誰かの誘いを断る時の次の表現を比べてみてください。
①真不好意思,我明天去不了。 Zhēn bù hǎoyìsi, wǒ míngtiān qù bùliǎo.
②真不好意思,我明天不能去。 Zhēn bù hǎoyìsi, wǒ míngtiān bùnéng qù.
訳すとしたら、どちらも「本当にすみません。明日は行くことができません。」となりますが、可能補語を使って「自分ではどうにもならない」ということを表現する①と違い、「能」を使った②の方は「他にもっと優先したいことがあるのかもしれない」という印象も与えかねません。
テストのための文法だと味気ないけど、こんな風に、ある種の言葉を「可能補語」というグループにまとめることで、話し手の心情をより深く理解できるのだと思えば、文法用語を覚えてみるのも悪くない気がしてきませんか?
(2020.4.29)