台湾人スタッフから、こんな質問を受けました。
「“水餃子”を“みずぎょうざ”って読まないのはなぜ?」
「“水羊羹”は“みずようかん”なのに」
時々、こんな風に思いがけない方向から質問が飛んでくるので油断なりません。
さあ、どうして「水餃子」を「みずぎょうざ」って読んではいけないのでしょうか?
まず、「水羊羹」から。
「ようかん」って、和菓子の類だと思っているけど、改めて考えると「羊羹」の音読み。でも、中国語の「羹gēng」は濃厚なスープのことだから、「羊羹yánggēng」は「羊のスープ」になっちゃいます。
なぜ、これがお菓子になっちゃったのでしょうか?
元々「羊羹」は羊のスープを冷まして作ったものでした。それが日本に伝わった後、肉食を禁じられている禅僧が、植物性の材料だけを使って再現したお菓子が「ようかん」なのだとか。
羊羹屋さんの老舗、虎屋さんのサイトにもちゃんと説明がありましたよ。
そうすると、「水羊羹」の「水(みず)」は訓読み、「羊羹(ようかん)」は音読みということになります。ちょっと変則的(湯桶読み)ですが、お菓子の「ようかん」が日本で生まれたという背景を考えると、訓読みの「みず」との組み合わせの方が自然だったのかもしれません。
何より、日本語の「みず」は、ある温度以下のものしか指さないので、ひんやりした感じを表すには、ぴったりです。
中国語で「水果shuǐguǒ」はフルーツのこと。これが日本語になると「水菓子(みずがし)」。こちらもひんやり感が伝わりますね。
「水餃子(すいぎょうざ)」の方は、全部音読みなので原則通り。もし「みずぎょうざ」と読んでしまうと、何だか冷えきったものが出てきそう。熱々のものをふうふう言いながら食べる美味しいイメージが台無しです。
「水餃shuǐjiǎo」を始め、中国語の料理名に「水shuǐ」がついているのは、ゆでたり煮込んだりするもの。冷たいものではありません。四川料理には、「水煮魚shuǐzhǔyú」というのもあります。唐辛子や花椒を効かせて、川魚と豆もやしを煮込んだもので、私の大好物!これももちろん熱々のものが出てきます。
日本語の「水みず」と中国語の「水shuǐ」の違いは、こんなところにもあったのですね。