台湾のTVドラマには、ほとんど中国語字幕がついています。だから、上手く活用すれば、よい教材になること、間違いなし、です。でも、その気になってしっかり音声と字幕を比べていると、「あれ?」と思うこともよくあります。役者さんがしゃべっている言葉と字幕が、一部違っているのです。
一番よくあるのは、音声は中国の南方方言に由来する台湾語なのに、字幕は北方方言に由来する台湾華語になっている、というパターン。日本語では想像できないほど、中国語は方言差が大きいので、外国語のセリフに母語の字幕が付いている感覚に近いのかもしれません。このパターンは、本当にたくさんあります。もし、長いセリフがぜ~んぶ台湾語なら、ズレにはすぐ気付くかもしれません。でも、一文の中で単語ひとつだけが台湾語で発音されているというケースもかなりあるので、うっかりするとズレていることにも気づかなかったりします。
それと似たようなパターンが、セリフは英語なのに、字幕は意訳した中国語になっているもの。例えば、音声の方は「slogan」という英語なのに、字幕の方は「口號(kǒuhào)」になっているケースです。
そして、もうひとつのパターンとして、政府の広告規制に関わるものがあります。消費者が、それと気付かない形で、ニュースやドラマなどに公告を紛れ込ませるPlacement marketing(中国語では「置入性行銷」)の横行を阻止するために、台湾では「國家通訊傳播委員會(NCC)」という組織が監視活動を行っているのです。
例えば、大ヒットした「後菜鳥的燦爛時代/邦題:華麗なる玉子様」というドラマの中では、何度も出てくる「王子麵(Wángzǐ miàn)」という商品名に対応する字幕が全て「泡麵(pàomiàn)/インスタントラーメン」になっていました。「王子麵」は台湾の人なら多分誰でも知っているという有名な商品で、お湯をかけずにそのまま食べます。日本で言うと「ベビースター」みたいな感じでしょうか。(実例は以下のブログ記事でご確認ください)
時には、制作者側がこの規制に過剰反応していると思うこともあります。逆に、上の例のように、画面ではしっかり商品名が見えて、役者も何度も連呼しているのに、「字幕だけ一般名詞に変えて意味があるの?」と思うようなケースもあります。
台湾ドラマで中国語を勉強しているみなさん。
その音声が聞き取れないのは、あなたの責任ではないかもしれませんよ。気楽にたくさん見て聞いて、生の中国語に慣れてくださいね。
2016.10.23