すき焼きにもキャベツ!
台湾の料理には、キャベツがよく使われます。しゃぶしゃぶやすき焼き等の鍋物にも、白菜ではなくキャベツが入るのが一般的。寒い季節においしくなる白菜が、暑い台湾には少ないというのがその理由でしょう。
そのため、台湾と中国では、キャベツに相当する中国語が以下のように違うということは、台湾で暮らし始めて比較的早い段階で気づく人も多いのだろうと思います。
(台湾華語/中国普通話/日本語)
高麗菜/卷心菜、洋白菜/キャベツ
「正しい」読み方は?
では、この“高麗菜”の「正しい」発音が何かというのは、台湾で生まれ育った言葉のプロにとっても、ちょっと難しい問題のようです。
まず、次の動画で、“高麗菜”の発音を聞いてみてください。
台湾華語と中国普通話の違いをシリーズで紹介してくれるこの動画では、台湾代表のおサル君がgāolìcài、中国代表のパンダちゃんがgāolicàiと発音しています。
“麗”を第四声で読むかそれとも軽声で読むかというこの動画の違いは、台湾に比べ中国の方が軽声が多いという一般的な特徴に合っているので、大きな問題ではありません。
ところが、この“高麗菜”を台湾教育部の「国語辞典」で調べてみると、“麗”の声調が次のように第二声になっているのです。
一方、台湾の街中で聞く「高麗菜」の「麗」は、いつも第四声のような気がします。同僚たちに聞いても、みんな第四声で発音すると言うのです。

学校の先生も悩んでしまう⁈
調べてみると、これは小学校の先生にとっても難問のようで、「台中縣東寶國小」という小学校のデータベースの中に次のような説明がありました。(原文は中国語、抄訳は弊社、元記事は現在リンク切れ)
1.2002/12/13の問い合わせ
「國語推行委員會」(日本の「「文化審議会国語分科会」に相当)に対し、以下のような問い合わせを行った。
●“高麗菜”の“麗”の注音は“高麗”と同じㄌㄧˊ(li2)なのか?
●もしそうなら、慣例に従いㄌㄧˋ(li4)とつづることも認められるのか?それともㄌㄧˊ(li2)だけしか認められないのか?
2. 2003/2/10「國語推行委員會」からの回答
“高麗菜”の“麗”はㄌㄧˊ(li2)で読むべき。速く読む場合は軽声になることもあるが、教科書の注音のつづりはㄌㄧˊ(li2)とする。
3.結論
“高麗菜”の“麗”の正確な注音のつづりはㄌㄧˊ(li2)。
小学校の国語の先生をも悩ませるぐらい、辞書の表記と現実の発音がずれている、ということですね。
朝鮮半島にあった“高麗”の発音はGāolí。だから“高麗菜”の“麗”も第二声で発音すべきというお役所の説明は、一見理にかなっているように見えますが、そもそも“高麗菜/キャベツ”と「朝鮮半島の高麗」との間に何か関係があるのかどうかという問題もありますね。
現実問題として、外国人がもしgāolícàiと発音したら、台湾の人にはきっと「発音、間違ってる!」と思われてしまいます。言葉の「正しさ」の基準は、時にとても曖昧になるということを示す好例と言えるでしょう。
なお、「キャベツ」に相当する中国語に様々なバリエーションがあることは、中国普通話の話の中でも時々取り上げあられます。生活に密着した言葉は、なかなか統一されないということなのでしょう。