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ライター:たまり

台湾華語と台湾語の波間を漂う日本人。
ブログ「台湾語がちょびっと話せるよ!」で、たまりワールド炸裂中!

抓耙仔:暗黒の白色テロ時代を象徴するコトバ

抓耙仔

抓耙仔
jiàu-pê-á・ liàu-pê-á イアウベーアー
密告者、チクリ、スパイ


 

台湾の白色テロの恐怖を描いたゲーム『返校』。あまりの人気に映画化までされて大ヒット、2019年金馬奨の新人監督賞他計5部門を受賞しました。作品のキーワードとなるのが台湾語のこの言葉、“抓耙仔(jiàu-pê-á・ liàu-pê-á/イアウベーアー)” 。テーマと言っていいほどの、重要な言葉です。

抓耙仔

(画像はDVDの表紙から)

他の台湾ドラマや映画、小説でもよく出てきます。

 

(1)2022年話題の台湾ドラマ『正義的算法』第17話、19分37秒。

なぜか法廷で被告、原告、別々の弁護をすることになった同僚の劉浪と林小顔。でも同僚なので(仲良しだし)、問題の工場を一緒に見に行きます。そこでこっそり自分側の先輩弁護士に様子を報告する林小顔、見とがめた劉浪が一言、

你在幹嘛?在jiàu-pê-á嗎?
(なにしてんだ?チクりか?)

 

(2)同じく『正義的算法』第17話、20分28秒、上のセリフのちょっと後です。

工場の近所で聞き込みをする劉浪と林小顔。おい200元貸せ、と劉浪が林小顔に声をかけるのですがその時…

jiàu-pê-á、借個兩百
(チクり屋、200元貸してくれ)

ちなみに、中国語字幕は(1)は“在告密嗎?”、(2)は“密告者、借個兩百”となっています。台湾語の“抓耙仔”はスパイ、密告者、という意味の名詞ですが、華語の文脈で使われる時には動詞的にも使われるようです。

 

(3)2015年の台湾ドラマ『鑑識英雄』でも。

熱血美人刑事と科学捜査専門の鑑識チームが協力して殺人事件を解決していく・・・という話で、ミステリーだけど人間ドラマもあり、超面白かった!この “抓耙仔が出てくるのは第2集。主人公の楊茜がイケメン鑑識官、雷公をからかって「アンタ、学生の頃、校則守らない子が許せなかったんでしょ」。で、

抓耙仔
(アンタ、チクり屋だったよね)

会話自体は基本的にずっと華語での会話ですが、“抓耙仔”だけははっきりと台湾語の発音、“ liàu-pê-á イアウベーアー”です。

 

(4)私の好きな李昂の小説にも登場。
台湾の民主化運動における性差別の問題に鋭く切り込んだ問題作『北港香爐人人插』シリーズの二つ目、『空白的靈堂』です。小説は基本的には華語で書かれているのですが、要所要所で台湾語(または台湾語と思われる表現)が出てきます。 “抓耙仔(jiàu-pê-á)”が出てくるのは、小説の真ん中ぐらい、

「那些抓耙仔來來去去,親像在走灶腳(廚房)」
(ああいう密告者たちも普通にウロチョロしてるからね、まるで厨房さ)

 

※セリフの日本語訳はたまり

※参考(引用)文献:『北港香爐人人插』(李昂)九歌出版社(2010)作品自体は1997年発表