日本語と中国語で同じ漢字が使われていると、「あ、簡単」と思ってしまいますが、本当にその理解でよいかどうか、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。
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【ヒント】「山の頂上」ではありません。
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【解説】
”山上shānshàng”の表す範囲は、上の図の通り山全体です。時代華語1の第15課には、以下のような例もあります。
①在山上住了七、八年(山間部に7、8年住んでいた)
この人が住んでいたのは決して山の頂上ではないし、山の奥深いところでもありません。山のふもとの可能性が高いので、日本語にすると「山間部」となります。平地と比較して「山の方」と言っているだけです。次の例と比較してください。
②在山頂上住了七、八年(山頂に7、8年住んでいた)
③在山裡住了七、八年(山の中に7、8年住んでいた)
②は、修行等何か特別な事情がありそうな感じがします。③もわざわざ人里から離れたところで暮らしている感じです。①には、そういった意味合いはありません。
視聴華語2の第1課には、以下のような例もあります。
④到山上去滑雪(山にスキーに行く)
スキー場があるのは、山の中腹ですね。この例からも、”山上shānshàng”が、「山の頂上」を表しているわけではないことがよくわかります。
この”上shàng”の使い方は、「表面」を表す”掛在牆上(壁にかける)” ”貼在門上(ドアに貼る)”の”上”に似ていると考えるとよいでしょう。
”風景fēngjǐng”を修飾する名詞には、”在”の後に置く名詞と同様、場所詞がよく使われます。つまり、”山上的風景”の”上”を省略して”×山的風景”と言うことはできないのです。以下の例も参考にしてください。(場所詞を作る”上”についての説明はこちら)
⑤海邊的風景(海の景色)/×海的風景
⑥湖邊的風景(湖の景色)/×湖的風景
日本語と中国語で同じ漢字が使われている時に、そのずれに気づくのは簡単なことではありませんが、④のような例には、「”山上shānshàng”は、『山の頂上』ではない」と気づくヒントが隠れています。例文をていねいに和訳する練習を続けることで、そのヒントもきっと見つかりやすくなるのではないかと思います