中国語では、名詞の後に「上shàng」がついているのをよく見ますね。その中には、「坐在椅子上zuò zài yǐzi shàng/椅子の上に座る(?)」のように、日本語に直訳しにくいものもたくさんあります。では、この「上」ってそもそも何のためについているのでしょうか?
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【ヒント】「在zài 」の後ろにある名詞につくことが多い。
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【解説】
「坐在椅子上」を「椅子の上に座る(?)」と訳してしまうと、椅子の上に正座でもしているような感じを受けてしまいますね。日本語では、こういう場合、「上」をつけずに「椅子に座る」と言うからです。
同様に、「睡在床上shuì zài chuáng shàng (ベッドに寝る)」「 放在書架上fàng zài shūjià shàng(本棚に置く)」「 掛在牆上guà zài qiáng shàng(壁にかける)」等でも、和訳には「上」をつけないのが普通です。
ところが、中国語では、これらの「上」を省略することができません。では、この「上」は何のためについているのでしょうか。
中国語では、特定の位置にくる名詞が、「場所詞(場所を表す言葉)」でなければならないという制約を受けることがあります。その代表が「在」を使う場合です。以下の三通りの文型では、いずれも、「在+場所詞」の形になっていますね。
(1)在+【場所詞】 ~にいる/~にある
①我爸爸在日本。Wǒ bàba zài Rìběn.(父は日本にいる)
(2)在+【場所詞】+【動詞】 ~で・・・する
②他在車站等你。Tā zài chēzhàn děng nǐ.(彼は駅であなたを待っている)
(3)【動詞】+在+【場所詞】 ~に・・・する
③放在這裡吧!Fàng zài zhèlǐ ba!(ここに置いて)
「場所詞」を大きく分けると次の三通りになります
A.専ら場所を表す言葉(固有名詞、場所指示詞、方位等):日本、台灣、台北、這裡、那裡、哪裡、上面、裡面、前面、旁邊等
B.大きな空間を持つ施設を指す言葉:機場、車站、學校、公園、圖書館等
C.物を表す言葉+上、裡等:椅子上、桌子上、飛機上、錢包裡、杯子裡等
ある名詞が「場所詞」になれるかどうかには制限があるので、「物」を表す名詞は、Cのように、後ろに「上、裡」のような場所を表す言葉を加えないと「場所詞」になれないのです。これを「場所詞化」と言います。
逆に、Aのような専ら場所を表す言葉には、「上、裡」を加えることはできません。Bはその中間で、文脈によって「上、裡」がついたりつかなかったりします。つけてもつけなくてもいい、という場合もあります。
従って、以下のような例の「上、裡」は、全て省略することができません。「床、課本、杯子、衣櫃」は物を表す言葉だからです。
④我的貓都跟我一起睡在床上。Wǒ de māo dōu gēn wǒ yìqǐ shuì zài chuáng shàng(うちの猫はいつも私と一緒にベッドに寝る)
⑤你的筆在課本上。 Nǐ de bǐ zài kèběn shàng.(あなたのペンは教科書の上にあります)
⑥倒在杯子裡吧!Dào zài bēizi lǐ ba!(コップについで)
⑦我想把這件衣服掛在衣櫃裡。Wǒ xiǎng bǎ zhè jiàn yīfu guà zài yīguì lǐ.(この服をクローゼットに掛けたい)
「場所詞」を求める文型には、「在」を使うもの以外にも、以下のようなものがあります。
●「場所詞」+有+【物事】 ~に・・・がある/いる
●「場所詞」+【動詞】+著+【物事】 ~に・・・が××してある
従って、中国語で「~上」「~裡」の形が出てきたら、その「上、裡」は省略できないと考えた方がよいでしょう。
(2019.8.14)