「給」はよく使う動詞ですが、これを自然な日本語に訳すためには、一工夫必要です。

【ヒント】「あげる」を使わない。「你」も「我」も訳さない。
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【解説】
「給gěi」という動詞の意味は、まず「あげる」という訳語との対応で覚えることが多いと思います。次のように「あげる」を使って訳せる例もたくさんあるからでしょう。
①我給你一個吧。Wǒ gěi nǐ yí ge ba.(一個あげるよ。)
ところが、この「你」と「我」を入れ替えると、もう「あげる」では訳せなくなってしまいます。
②你給我一個吧。Nǐ gěi wǒ yí ge ba.(一個ちょうだい。)
これは、「給gěi」の表す意味と、日本語の「あげる」の表す意味の範囲が次のように違っているからです。

日本語の「あげる」は、Aの立場で述べる時にしか使えません。また、Bが目上の人の場合には「さしあげる」という敬語に変えるという制約がありますね。Bの立場で述べる時には、「くれる、もらう」等別の動詞を使うことになります。ここでも敬語の問題が出てきます。
一方中国語では、ABどちらの立場で述べても「給」です。
日本語は中国語に比べ、主語をはっきり言葉にして言うことが少ないのはよく知られていますね。それだけではなく、目的語の位置に来る人称代名詞(私、あなた、彼等)も、中国語に比べると使われる比率がずっと低い。それは、日本語の場合、上の図のような動詞そのもののバリエーションの豊富さによって、「誰が誰に」という情報までをその中に含んで表現することができるからです。
だから、「你給我一個吧。」を「あなたは私に一個ちょうだい」と訳すとかなり不自然な日本語になってしまいますね。情報が重複していて、ちょっとしつこく感じてしまうのです。
逆に、「一個ちょうだい。」「一個あげるよ。」という日本語を中国語に訳す際には、「誰が誰に」という情報を文脈から読み取って、補う必要があります。
(2018.11.14)

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