誘っても「うん」と言ってもらえない、約束したくてもできない、という恋する男の子の切なさを象徴するのが、今回のセリフの”約yuē”という動詞です。
(画像はLINE TVからお借りしました)
你約不出去就繼續約
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日本語の「約」という漢字の使い方に影響されて、”約yuē”の意味を「約束する」と思い込んでいる人もいるかもしれませんが、中国語の方は、合意したという結果までは表現していません。
約束するために「誘う」「相談する」という段階までしか表現されていないので、その結果、約束できたかもしれないし、約束できなかったかもしれないという両方の可能性があります。
もし、「約束した」とはっきり言いたければ、”約了”だけでは不十分で、結果補語の”好”も加えて”約好了”と言います。
TOCFLの模擬試験問題(BandBリスニングvol.2_10)には、次のような例も出てきますが、この場合も、お母さんがOKするかどうかは不明です。
打電話約媽媽一同慶祝(お母さんに電話して一緒にお祝いしようと誘う)
”約出來/約出去”は、「デートに誘う」。”約她出來/約她出去”のように、誘う相手を間に入れることもあります。その結果、相手がOKして実際にデートできたかどうかは、前後の文脈を見ないとわかりません。
”約不出來/約不出去”なら、「誘っても相手のOKがもらえない」という意味です。「どうしてもできない」ということを伝える可能補語を使っていることから、何度も誘ったのに、或いはすごくがんばったのに、相手にOKしてもらえなかったことがわかりますし、今後もOKしてもらえる可能性が低そうだということもわかります。
今後も何度も失敗しそうだという判断は、後半の副詞が、「もう一度」という意味の”再”ではなく、「続けて」という意味の”繼續”になっていることにもつながります。
日本語と同じ漢字が使われている場合、とりあえず、その知識を頼りに中国語の意味を推測してみるのが悪いわけではありません。むしろ、日本語の漢字の知識を上手く使うことで、効率よく学べることもたくさんあると思います。だから、中国語の意味が、日本語の同じ漢字から推測する意味とずれていることがあるからと言って、あまり神経質になる必要はないのです。
でも、こういうズレがわかりやすい例に出会った時には、ちょっと立ち止まって辞書を引いたり、周囲のネイティブに聞いたりして、勘違いを修正していくことも必要です。背景や話し手の気持ちを推測しやすいドラマのセリフには、思い込みを修正するよいヒントがたくさんあると言えるのかもしれませんね。
(2021.12.7)