俗女養成記
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台湾ドラマで中国語

俗女養成記 (1):レディになれなくても

このドラマで最初に注目したのは、公式Facebookのあらすじの見出し。タイトルの意図を考える上で、大きなヒントにもなる言葉ですす。

俗女養成記

(画像は公式Facebookからお借りしました)

當不成淑女又怎樣?
レディになれないからって、それがどうしたの?

「當不成dāngbùchéng」は、何かになりたくてもそれを果たせないという意味。「又怎樣yòu zěnyàng」は「だからどうした?」「それが何か?」に似た言い方で、周囲から評価してもらえそうにない状況に対して、開き直っている感じが表れています。

 


「俗女養成記」という中国語のタイトルを直訳すると、「ダサい女への成長記」という感じでしょうか(邦題は「おんなの幸せマニュアル」)。

「俗女súnǚ」は、主人公の陳嘉玲がずっとなりたくてなれなかった「淑女shúnǚ(レディ)」を意識した造語のようです。「俗sú」と「淑shú 」の発音は、そり舌の音の少ない台湾では似たような音になることも多いので、台湾ドラマお得意のダジャレとも言えます。

「レディ」への変身過程を描いた映画としては「マイ・フェア・レディ」が有名ですが、その中国語タイトルは「窈窕淑女yǎotiǎo shúnǚ(しとやかで美しいレディ)」です。ドラマの原作者インタビュー記事では、作者そのものがこの「窈窕淑女」という言葉で形容されています。

この映画と対比しながらドラマを見ると、興味深い仕掛けも見えてきます。例えば、映画「マイ・フェア・レディ」では、英語のなまりの矯正がレディになるための重要な条件の一つとして描かれているのですが、このドラマでも、子供の頃から家庭で使っている台湾語を、学校で華語(ドラマでは「國語guóyǔ」と呼ばれている)に「矯正」していく過程が重要なテーマのひとつになっています。「淑shú 」というそり舌の音は、華語のベースとなった北京語の特徴のひとつですが、そり舌のない台湾語を母語とする人たちは、これが「俗sú」と同じ発音になってしまいがちなこともタイトルの意図につながっています。

「そり舌の音をきちんと発音できる『淑女』の方が、台湾語なまりの華語(あるいは台湾語)を話す『俗女』より素晴らしくて幸せなのか」と問いかけてくるこのドラマ。大人になった主人公の陳嘉玲が、実は華語だけでなく英語も流暢なのだという設定は、かなり皮肉が効いているのです。

※「淑」は台湾華語では第二声、中国普通話では第一声で読みます。

(2020.10.31)

 

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邦題:おんなの幸せマニュアル

2019年に大ヒットしたドラマです。

「淑女」になりたくてもなれなかった女の子の成長過程がユーモアたっぷりに描かれてます。

台湾語と華語の関係も重要なテーマになっているので、台湾の現代史や言語政策を考えるための入門教材としても最適です。