普段から、台湾の中国語(華語)と中国の中国語(普通話)の違いに興味があり、ずいぶんわかるようになってきてはいるのですが、それでも前後の流れで意味が理解できると、よく聞く言葉の違いを、ずっと聞き逃したままということも少なくないのです。
この言葉もそうでした。
(画像はLINE TVからお借りしました)
你一點都不差。少しもダメじゃない。 |
恋愛問題で傷ついて、「私って本当にダメなのかなあ」と聞いてきた友達を、「そんなことないよ」と慰めています。
さて、皆さんはこの「差」を第何声で読みますか?
中国では、「差chà」と第四声で発音しますが、台湾ではほとんど第一声で「差chā」と発音します。この場面でも「第一声」で発音されていました。
なぜ、「ほとんど」なのかというと、民間では第一声が普通なのに、辞書や教科書では第四声になっていることが多いから。実は、辞書表記は過渡期のようで、同じ教育部の国語辞典でも、古い「重編版」は第四声、新しい「簡編版」は第一声になっています。そのうち、民間の発音に統一されて全部第一声になるのかもしれませんね。
ちなみに、中国でよく使われる「差」の読み分けは次の三通り。
①chā:「相違」を表す場合。「差別chābié 、差距chājù」等。
②chà:「劣っている、足りない」を表す場合。「很差hěn chà、差不多 chàbuduō」等。
③chāi:「派遣する」という意味を表す場合。「出差chūchāi、差遣 chāiqiǎn」等。
これに対し、台湾では②もほとんど第一声になるのです。「差不多」の発音も「 chābuduō」です。台湾人の同僚に聞くと、小学校の時に「差」を第四声で読むことがあるというのは習ったけれど、自分で第四声で発音したことはないのだとか。
最後に今日のタイトルについて。
ずっと聞き逃していた「差」の声調の違いに気づいたきっかけは、この字幕にある「不」の声調でした。
もし中国式に「差」を「chà」という第四声で発音するのなら、その前の「不」は第二声の「bú」となるはずです。ところがこの場面では「差」が第一声だたったので、その前の「不」は第四声の「bù」と発音されていました。この「不」の声調の違いに違和感を感じて聞き直した結果、「差」の声調の違いにようやく気づいたというわけです。
「不」の変調のルールは以下のページをご参照ください。
ちなみに、私たちの会社ではこの「差」の発音の違いだけで、10分ぐらい仕事を中断して盛り上がったりします。楽しそうな会社でしょ?
(2018.10.20)