登場人物の心境を理解するカギとなるセリフを見つけるのも、ドラマを使った中国語学習の楽しさのひとつです。

(画像はLINE TVからお借りしました)
我有什麼好不習慣的
私が何になじめないって言うの?→なじめないことなんて、あるわけないでしょう
台北での仕事を辞めて田舎に帰った主人公ですが、なかなか新しい生活になじめません。後ろに乗っている幼馴染の女の子に、「君も以前台北に住んでいたことがあるそうだけど、ここの生活にはなじめてる?ぼくは全然なじめないんだ。だって……」と話しかけると、こんな冷たいセリフが返ってくるのです。
女の子の直前のセリフから、つなげてみましょう。
我從小在這邊長大,我有什麼好不習慣的
小さい頃からここで育ってきたんだから、なじめないことなんて、あるわけないでしょう
実は、複雑な背景のあるこの女の子にとって、”不習慣(なじめない)”は地雷のような言葉でした。周囲の人に大切にされている主人公が、「なじめない」等と言っていることにイラついているのです。
その「がまんできない」という気持ちを象徴するのが、このセリフの”有什麼好……的”という慣用表現です。この形を使うと、「何を~する必要があるの→~する必要なんてないでしょう」という反語になります。次のように、強がってみせる時にもよく使われます。
①我有什麼好難過的? (私が何を悲しんでいるって言うの→全然悲しくなんかないよ)
TOCFLの模擬試験問題には、以下のような例も出てきます。
②有什麼好緊張的?(何を緊張することがあるの→緊張することなんかないでしょう)BandB_vol.1_no.9
③有什麼好捨不得的?(何がもったいないっていうの?→もったいないことなんてないでしょう)BandB_vol.1_no.20
②では、試験を控えて緊張するという相手に対して、「自分はとっくに準備できているから緊張なんかしない」と返しています。③では、「もったいないから、古いテレビを修理して使おう」と言っている相手に、「修理代だってバカにならないのに」と反論しています。
どちらも、かなり強い口調で相手の言うことを否定しています。反語を使っているため、ストレートに批判するより、皮肉めいたニュアンスも加わって、より強い口調になるのです。
ドラマのこの場面では、女の子が主人公に対していらだちを募らせていく過程がよくわかります。そのカギとなるのがこのセリフなのですが、この後の女の子の言葉で、なぜそれほどいら立つのかもよくわかります。ドラマでぜひその過程も確認してみてください(台湾版第2話)。
(2021.11.2)