今回は、主人公が立ち退き交渉をしている地権者のおじいさんの言葉です。あれこれ良い条件を提示してその気にさせようとする主人公に対して、こんな言葉が返ってきました。今回注目した言葉は、”活不了”です。
この<【動詞】+不了bùliǎo>はよく使われる可能補語のひとつですが、どんな場合に使うのかがわかりにくいと思っている人も多いかもしれませんね。
実は、これは可能補語の代表とも言えるもの。「どうしても~できない」という本人の力ではどうにもならないことのうち、他の可能補語を使ってその理由を明確に表現することが難しい場合に使われます。
例えば動詞が「吃」の場合、他の可能補語を使えば、以下のように「食べられない」理由を具体的に表現することができます。
①吃不起chībùqǐ :その食べ物や飲食店は、自分にとって価格が高すぎる
②吃不到chībúdào:その食品が売り切れている、市場に出回っていない
③吃不下chībúxià:お腹がいっぱいでそれ以上入らない
ところが、「歯の痛み」や「アレルギー」が食べられない理由の場合、それにぴったり合う可能補語はありません。また、「満腹」ではあるけれど食べられない理由は他にもあるという場合や、自分でも理由がよくわからない、或いは相手にそれをはっきり伝えたくないという場合もあるかもしれません。でも、とにかく「どうしてもできない」と言いたい時に使うのが、“吃不了chībùliǎo”なのです。
なお、中国普通話では、この“吃不了”を「量が多すぎて食べきれない」という意味で使うこともありますが、台湾華語ではこの使い方はほとんどないようです。「食べきれない」は“吃不完chībùwán ”で表します。
このおじいさんが、「何年も生きられない」理由を一言で言い表せるような補語は他にはありません。でも、「とにかく無理なんだ」と伝えたい時に選ばれるのが、この”活不了huóbùliǎo”なのです。
この「本人の力ではどうにもならない」という可能補語の特徴を上手く使っているのが、次のような例。
④不好意思,我明天去不了。Bù hǎoyìsi, wǒ míngtiān qùbùliǎo.(すみません。明日はどうしても行けないのです。)
同じ「行けない」でも、”不能去bù néng qù”を使うと「他の用事の方を選んだ」という可能性も含まれるため、「自分は行きたいのだけど、どうしても無理」という気持ちが伝わりにくくなります。断りにくいことを断る時に、覚えておくと便利な表現です。
肯定形は<【動詞】+“得了deliǎo>ですが、可能補語は否定形で使われるのが基本なので、肯定形にして使うのは、質問に対する返事、反語等の限られた文脈だけです。
(2021.8.12)