「Taiwanは、いったいどの漢字で書くのが正しいの!?」
これは、台湾で暮らし始めると、誰もが混乱してしまう問題かもしれません。
なぜなら、街なかにも、ネット上にも、「A.臺灣」「B.台灣」という2種類の書き方が、あふれているから。多分、「C.臺湾」「D.台湾」が正式には認められていないことも、日本ではあまり知られていないのかもしれません。だから、A~Dの書き方が、多くの日本人の中で、モヤモヤっとしている気がします。
今日は、この問題を少し整理して書いてみたいと思います。
まず、台湾に来た留学生が中国語(華語)の学習で使う教科書の定番、「新版實用視聽華語(一)」ではこうなっています。
「臺/台」という並び方や、その下の例文から見ると、この教科書の立場は、「基本は『A.臺灣 』だけど、『B.台灣』でも大丈夫」であることがわかりますね。
この立場は、以下の記事で紹介されている教育部の指導方針(2010年末)とも合致しています。
この記事から、教育部の方針をまとめるとこうなります。
1.これまで、台湾社会では「A.臺灣」と 「B.台灣」とが混用されて来たが、今後教育部の公式文書は「A.臺灣」に統一する。
2.学校や教科書を編纂している出版社にも、「A.臺灣」で統一するよう指示する。台北、台中、台南等の地名も一律に臺北、臺中、臺南とする。
3.これまでの慣習に配慮し、試験でB.台灣 と書いても減点の対象とはしない。道路標識や看板を書き直すこともしない。
4.他の公的機関の表記方法については中央政府と調整中。
おもしろいのは、「“台”は“臺”の簡体字ではなく、異体字」という教育部の見解です。“台”と“臺”を「異体字」と言ってよいのかどうか、という議論はさておき、“台”の使用を認める際に、わざわざ「簡体字ではない」と注釈している点にご注目ください。
”湾”は簡体字
政治的な理由により、台湾政府は、公式文書での「簡体字」の使用について、厳しい制限をしています。
C.臺湾やD.台湾が、ご当地で認められないのは、“湾”が簡体字だからなのです。もし、“台”を簡体字、と言ってしまうとこれも使えなくなってしまいます。現実の社会やネット上にあふれる“台”の字を一斉に無くしてしまう作業の困難さを考えると、どうしてもこれを「簡体字」と認めるわけにはいかないのでしょう。
でも、中国で簡体字が決められる際には、異体字や民間の略字も参考にされているので、実はどこからどこまでが「簡体字」なのか、というのは、線引きがとても難しいのです。
でも、総統府のサイトでは、やはり以下のように「A.臺灣」が使用されています。
でも、上記の記事を見ると、2010年当時は、中央政府の文書でも「B.台灣」が使われていたようですね。
現実には、いくら教育部が決めても、“台”と“臺”のごちゃまぜ状態は、なかなかなくなりません。
コラム:「臺北と台北」
ブログ:「ニュースのキーワード(2016/5/19) 打卡②」)
こんな風にいろんなバリエーションを認めてしまう漢字のおおらかさ、度量の広さ(いい加減さ?)は、長所と言えるのかもしれませんが。