母湯
mǔtāng/m̄-thang ムータン
~するな、やめて、ダメ
たまりのブログで検索数上位に入ってくる語彙。よく見かけるけど、華語の意味「mother soup」からはなんのこっちゃ全くわからない言葉だからでしょうね。これは台湾語の“毋通(m̄-thang ムータン)”を音訳したもので、漢字に意味のない「夜露死苦(ヨロシク)」系の語彙。ここ数年で“母湯”の漢字がすっかり定着している感じです(漢字だけに)。例をいくつか挙げてみます。
(1)2018年の台湾ドラマ『三明治女孩的逆襲(サンドイッチガールの逆襲)』日本版第11話。開始27分くらい。
CEOは俺が直接やっつけてやる、と言うイケメン大家のズージュンに主人公のシャオチンが、
m̄-thang ムータン
(やめて!)
と言うのですが、中国語字幕は確認できていません。おそらく意訳で“不要”か音訳で“母湯”か、のどちらかだと思います。
(2)2018年の『自由時報』の記事。
【職場霸凌篇】學長母湯喔!熊讚上班第一天被欺負⁉
(【職場でのいじめ編】先輩やめてよ!熊讚出勤初日にイジメの洗礼⁉)
2017年のユニバーシアードで大人気だったマスコットの熊讚ちゃん。あまりの人気にそのまま台北市のマスコットになったのですが、プチ整形して2代目として登場! そのお披露目イベントで初代のセンパイ熊讚も登場してちょっとイジワルされちゃった……という記事でした。2017年のユニバーシアードは台湾の選手たちが大活躍!本当に大盛り上がりでしたね。
(3)2022年8月『自由時報』記事。
「母湯匯款!」熱心婦勸不了鄰居 報警及時阻詐
(「振り込んじゃだめ!」親切な女性が隣人を止めるも振り切られ 通報して事なきを得る)
台中で振り込め詐欺に遭いそうになった陳さんを、近所の親切な女性が「それは詐欺だから振り込んじゃだめ!」と忠告したのですが、陳さんは言う事きかずに銀行へ。仕方なく通報して警察が動き、何とか詐欺を食い止めることができた…というニュースです。ネット版とは言え、大手新聞社の記事見出しでこんなスラングが出てくる台湾、ホント油断できません。
(4)ちなみにズバリ台湾語の“毋通(m̄-thang ムータン)”の方も台湾では相当に浸透しています。漢字はわからなくても聞いたらわかる人がほとんどでは?数年前、屏東で台湾人の友人に会ったとき、彼は台湾語で“毋通袂記(m̄-thang bē-kì)二二八”(二二八事件を忘れるな)とプリントされたTシャツを着ていました。かなり政治的なメッセージでしたが、全然平気、職場にも普通に着ていけるよ!と笑う友人にちょっとビックリ。台湾は本当に自由なんだなあと痛感したできごとでした。
※記事の日本語訳はたまり