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ライター:たまり

台湾華語と台湾語の波間を漂う日本人。
ブログ「台湾語がちょびっと話せるよ!」で、たまりワールド炸裂中!

台湾でお弁当が「便當」になった理由

便當

便當
biàndāng/piān-tong ベントン
お弁当、弁当


曹銘宗著『台灣國語』によると、元々台湾(台湾語)では“飯包(pn̄g-pau)”と言っていたそうです。食に関する話題で便”を使うのは、“便飯piān-pn̄g)”や“便菜(piān-tshài)”ぐらいしかなかったけれど、次第に“便當(piān-tong ベントン)”と言う人が増えて、“飯包(pn̄g-pau)”の方はあまり使われなくなったらしい。

ただ、“便”という字には日本語と同じように排泄物の意味もあるので、識者には大不評。“便當(piān-tong ベントン)”なんて品が無さすぎる!“大便當”とか“小便當”とか聞くに堪えない!と嘆く専門家も多かったそう。戦後の日本語使用禁止という政治状況もあって、政府は「お弁当」には“飯包(fànbāo)”の方を使うようにというおふれを出したこともあったとか。

しかし時すでに遅し。みんな、“便當(piān-tong ベントン)”という言い方に慣れてしまっていて後戻りできず、さらにその台湾語が華語読みされて“便當(biàndāng)”になって今に至る…。というわけです。

 

ちなみに中国でお弁当のことは“盒饭(héfàn)”と言いますが、多分もう“便當(biàndāng)”でも通じるはずです(地域や年齢にもよる)。


あまりにもポピュラー、あまりにも基本的過ぎて、台湾ドラマや映画で出てきても特に気にせず流してしまうので、記録したのは1つのみです。

無差別殺人事件の被害者のみならず加害者の家族にもスポットを当て、悪とは何か、正義とは何かを視聴者に問いかけた人気台湾ドラマ『我們與惡的距離(悪との距離)』、第7集。

被害者の遺族である夫婦の会話ですが、勇気をもって新しい一歩を踏み出そうとしている場面での一コマ。妻、喬安が夫、昭國にこう声をかけるのです。


我幫天晴還有喬平準備了便當,幫我送一下

(天晴と喬平にお弁当作ったから、届けてくれる?)

※参考文献 『台灣國語』(曹銘宗)聯經出版公司(1993)